俳句でワニのはなし

死に隣る春の病と気になる俳句

博士王仁碑3月20日に100日目を迎えた「100日後に死ぬワニ」。何気ない日常を描いた四コマ漫画は、100日目の桜吹雪の中に突如終わりを迎えた。
東京の桜は今が満開で、雨に打たれて散ろうとしている。本来ならば桜花の下に茣蓙を敷き、我世の春を謳歌するところが、死の足音に、動かざる春となってしまった。

今日は、外出禁止令の中、暇を持て余してネットサーフィン。やはり、「100日後に死ぬワニ」は話題となっており、

花吹雪に終はりしワニの物語

という俳句も見つけた。これは、鈴木霞童氏のブログに発表されたもの。俳句にすれば、「ワニ」の向こうに「王仁(わに)」が見える。王仁とは、古今集の仮名序に歌の父母と讃えられる和歌「難波津に咲くやこの花冬ごもり 今は春べと咲くやこの花」の作者。仁徳天皇の時代の人物である。
博士王仁碑「この花」は「木の花」で、ここで歌われたものは、その情景から、春告草とも称される「梅」ではある。しかし、コロナ禍に遅れたこの春ならば、桜の花が浮かんで見える。

背景には、闘争ゆえに辞退し続けていた仁徳天皇(大雀の命)の即位がある。百済から論語を伝えるために渡来してきた中国人・王仁が、渋る大雀に即位を促すために歌われたと言われている。意を決した大雀は、仁徳との諡号を得るほどの善政を敷き、古事記下巻の巻頭を飾るほどの、新たな時代を切り開いた。
そう言えば、上野公園の秋色桜の正面に、博士王仁碑がある。今年は寂しい春を迎えていることだろう。ワニの物語に終わりのないことを祈る。(泰)


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「俳句でワニのはなし」への2件のフィードバック

  1. ご紹介いただきありがとうございました!

    今日はもう死ぬまで見られないかもしれない「桜隠し」をこの目で見る絶好の機会でしたが、寒くて外に出る気になりませんでした。

  2. 食料調達に出かけた際、公園の桜を見てきました。今年は、見物客は少ない上、雪にまで降られて、桜にとっても災難の年ですね。

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