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蛙の脱皮

行動的になった蛙|芭蕉の魔術

蛙の俳句今日の雨は、梅雨を思わせる。田舎では蛙も鳴いているんだろうな。
「蛙」は春の季語。けれど、この生物は曲者だ。「雨蛙」とすれば夏の季語。さらに「かわず」と読ませた場合、古語では「河鹿」を指す。その河鹿は、夏の季語である。

松尾芭蕉代表句ともされる

古池や蛙とびこむ水の音

は、「蛙」を「かわず」と読ませている。「いけ」に「かわ」が被るから、「かえる」の方がいいだろうと思うのだが、ここに、不易流行を確立した芭蕉の意気込みがある。
つまり、和歌における蛙は河鹿のことであり、「鳴く」ものであった。本来は川に棲むその蛙を、芭蕉は池に放り込み、生活音とも言える水の音と、優雅なその鳴き声を交換してしまったのである。
この芭蕉句の出現により、幽玄の生物の皮を脱ぎ捨て、蛙は行動的になった。

けれども、どうもあの粘液質(?)な佇まいは苦手である。渓流に隠れて美声を聞かせてくれる方が、私にとっては有難い。(泰)


芭蕉の蛙と俳句季語(蛙)|末成歳時記
日本に見られる蛙の代表種は、ニホンアマガエル。3月頃に冬眠から覚めたニホンアマガエルは、11月頃まで活動する。蛙なら春の季語、雨蛙なら夏の季語となる。

芭蕉の蛙と俳句四季の幻想|俺の俳句
改暦などを経て、季語でさえ、その四季感はかなり歪んできている。それなのに日本人は、本当に四季を享受して生きているというのだろうか。