坂の上の墓地に遊ぶ子猫たち
日暮里の岡長うして若葉哉 子規
根岸に住んだ正岡子規にとって、日暮里界隈は絶好の散歩コースで、多くの俳句が残されている。掲句の岡とは、谷中霊園のあたりか、道灌山を指すのだろう。そこに通じる坂の俳句も多くあり、子規には「芋阪の團子の起り尋ねけり」など、日暮里の名店・羽二重団子とともに詠み込んだものがある。
若葉の薫る2020年4月4日、その谷中霊園に接する日暮里駅西口の看板が、猫フォントになった。近くに猫が多いことから、「にゃっぽり」の名でも知られる街の、イメージアップにつなげるために採用されたという。
けれども最近、付近の猫は減少傾向にある。かつては霊園に捨てられる子猫も多かったが、啓蒙活動の効果でほとんど捨て猫が見られなくなった上に、避妊手術の効果が表れているからだという。
猫を求めて日暮里駅に降り立つ観光客にとっては残念なことかもしれないが、いいことなのだと思う。それでも丹念に探し歩けば、パッと目の前を横切ったりもする。そんな今日は、本行寺の境内に一匹見かけた。
きれいな三毛猫だったから、きっと飼い猫。しかし、写真を撮ろうとすると新緑の陰に紛れ込む。腰を上げると、猫の像がのった供養塔が目に飛び込んできたから、深追いはやめて、手を合わせて帰ることにした。
【写真上】芋坂をのぼりきったところに谷中霊園がある。
【写真下】本行寺境内にある猫の供養塔。
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