不忍池の蓮|東京を彩る季語

不忍池を埋め尽くす蓮の花

桃色は辨天樣のはちすかな 子規

不忍池弁天堂の蓮の花明治を生きた正岡子規が詠んだ不忍池の蓮の花は、芭蕉の時代にすでにあったとされ、現代でも夏になれば美しい花を咲かせる。けれども戦時は水田となり、蓮池として復活したのは昭和30年(1950年)のこと。
「清らかなこころ」の花言葉を持つ不忍池の蓮の花は、女神の住まう弁天堂を取り囲むようにして咲き、平和の象徴となっている。

蓮といえば、レンコンの産地では秋から収穫期に入るため、枯れた葉は取り除かれてしまう。ここ不忍池の蓮は、冬になっても放置されているので、辺り一面見事な枯蓮となる。
けれども、やはり蓮は夏季がいい。桃色の花が咲く朝方、少し強い風に、その花を隠すように葉の裏白が広がっていく様は見飽きない。不忍池弁天堂の蓮の花

不忍池の蓮は、最も多いのが、桃色の花を咲かせる「浄台蓮」。その他に、白い花を咲かせる「不忍池斑蓮」、古代蓮の一種「大賀蓮」などがある。蓮観察ゾーンでは、これらを含めた5種類の蓮を観察することができる。
なお、蓮の花の見ごろは7月から8月。特に、7月下旬の不忍池は美しい。

【写真上】不忍池弁天堂を遠望する。江戸時代初期、寛永寺を創るにあたり、不忍池を琵琶湖に、そこにあった小さな島を、弁財天で有名な竹生島に見立てて、不忍池弁天堂が建てられたという。

【写真下】不忍池に咲く浄台蓮は、もともと不忍池に自生していたものだという。

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