秋色桜|東京を彩る季語

上野公園には俳人の名を冠した桜がある

井戸端の桜あぶなし酒の酔 秋色

上野公園の秋色桜日本有数の桜の名所である上野公園に、俳句がもととなって名付けられた桜がある。その名を「秋色桜(しゅうしきざくら)」。決して、秋に咲く桜でも、紅葉のように真っ赤に染まる桜でもない。樹種は、薄桃色の可愛らしい花を咲かせるヤエベニシダレザクラである。
「秋色桜」の名は、江戸時代に、当時13歳の菊后亭秋色が、井戸端の酔っぱらいに注意を促すために上記の句を書いて、上野の桜の木に吊るしたことに由来する(*詳細)。その後の秋色は、芭蕉第一の高弟其角の洒落風俳諧を取り仕切るまでの実力者となっている。
上野公園の秋色桜
なお上野は、現代も江戸時代の昔も桜の名所。現在では1200本もの桜に彩られるが、その歴史は、3代将軍徳川家光の時代に始まる。寛永寺を開いた天海僧正が、奈良の吉野山から桜を移植してきたというから、この句は、上野に桜が咲き始めて約半世紀後のもの。当時、既に江戸を代表する桜の名所となっていた。
秋色桜は、清水観音堂の裏手にある。ソメイヨシノが散る中に、満開を迎える。ソメイヨシノから2週間くらい遅れて咲くので、花を見るには注意を要する。

【写真上】清水観音堂裏手の井戸と、その奥が9代目秋色桜。なお、秋色桜の周囲にも、同じヤエベニシダレザクラの木が5本ほどある。

【写真下】秋色桜(ヤエベニシダレザクラ)の花。既に散り始めており、見頃(例年4月中旬)にはもっと密に咲く。

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