雑司ヶ谷霊園の夏
おくれゆく雑司ヶ谷墓地みどり射す 山田みづえ
盆に墓参りに行くと、墓石に太陽が反射して、暑くてたまらない。しかも藪蚊に追われて、少しもじっとしてはいられない。特に、ここ雑司ヶ谷霊園はそうだ。
池袋の真ん中の広大な平地。木陰はあるものの、墓地の大半は石で覆われていて、佇めば、下方から熱気に襲われる。
だから墓参りは、新緑の時期に限る。蝶々が緑風に舞う中であれば、故人とも良い会話ができる。
雑司ヶ谷霊園には、夏目漱石や竹下夢二の墓がある。親切にも、案内板にそれらの場所を記入してくれてはいるが、なにぶんあまりに広く、墓地に入ればどこも同じ景色に見えてなかなか見つけられない。
広大な敷地をぐるぐると2時間も歩いて、ようよう漱石の墓を見つけ出した時には、初夏の風にも汗の臭いが含まれていた。写真を撮るのもどうかとは思われたが、あまりに素晴らしいので、失礼してシャッターを押させて頂いた。
【写真上】雑司ヶ谷霊園の東側にある、霊園付属の花屋・此花亭。築100年近くになる建造物で、ガラス戸や手押しポンプに、歴史を感じる。
【写真下】夏目漱石の墓。ここから100メートルほど北に竹下夢二の墓もある。ほかに泉鏡花・永井荷風ら、有名人の墓が立ち並ぶ。