創造性を捨て去った言語

俳句道|言霊のはたらき

事物に向き合う時、日本語における詞は形を成さない。則ち色を宿す。

形をなぞるとは、他者の領域を犯すこと。立ち位置から来る差異は、決して埋め合わせることなどできない。つまり、他人の見る風景を、自らの風景に置き換えることなど許されないのだ。
このような世界に、情を交わすために生じたのが言霊。
言霊は、言葉の持つエッジを徹底的に削ぎ取り、色だけを残す。それを詞と言い、特段の説明を要さない信号のような役割を担う。そして、削ぎ取ったエッジから変じた象徴性を通じて、他者の景色を慮ることを可能たらしめているのだ。

この過程で構成力を退化させた日本語は、創造性に課題を抱える。けれども創造の事実とは、他者を蔑ろにすること。
この国の人は、言霊に、協調社会の創出を托したのである。(陰)